積極的にメモっていく姿勢

題名詐欺。更新頻度の低さが売り。

OSS コミュニティへの貢献と企業の関係について調べ #phpkansai で話しました

現在,情報処理学会 第87回 全国大会に参加している関係で,大阪府茨木市にいます.3 日間の日程で自分はいろいろ出遅れていることもあり,夜の予定がなかったため,connpass で勉強会を探し,どこかに参加することを思いつきました.
 
どうやら,第44回関西PHP勉強会(Laravel特集)が金曜夜に開催されるらしい...... 主催のあかつかさんに DM し,自分のようなナラズ者でも参加してよいかどうかを伺い,無事 OK をもらいましたので参加してきました. phpkansai.connpass.com  
せっかく勉強会に行くわけですから,ネタを込めていかねばと思い,茨木から梅田に向かう道中でネタを考えました.
 
しかし今回は Laravel 特集と書かれているので,Laravel に関係しないものは発表すべきではありません.......が,connpass を見ると「少しでも関わっていたら割と何でもOKです」と書かれています.少しでも関わっていたら...... 理解しました.

 

発表ネタ概要

自分はエンジニアでもなければ PHP を書くわけでもありません.仕事でも技術系カンファレンスや技術系コミュニティと企業の関係を健全に保ち,自社のエンジニアの成長と関連づけたり,他社やコミュニティの現在の動きについてアンテナを張ったりと,技術を取り巻くいろいろをいい感じにする人を頑張っています.
 
そこで思いついたのは OSS としての Laravel を取り巻くいろいろをきっかけに OSS コミュニティや OSPO について調べて発表することでした.当日の発表時間は 10 分とのことだったので,自分がある程度知ってる範囲のことをまとめるだけでも,十分な量になりそうだという推測は立っていました.
 

OSS としての Laravel に寄付するには?

例えば Open Collective で公表されていれば,それぞれが寄付している金額を知ることができます.以下は PHP Foundation のページです. opencollective.com

 
しかし,"Laravel" についてはここで知ることはできませんでした.いろいろ調べていると,Readouble という Laravel のドキュメント日本語化プロジェクトに取り組んでいる方の Web サイトに辿り着きました.そもそも一人プロジェクトということに衝撃を受けてしまいましたが,OSS の領域というのは得てしてそういうものです.
 
また,以下の寄付についての箇所を見ると,GitHub Sponsors か PayPal の個人間送金で寄付することができると書かれています. readouble.com

 
この同じページに Laravel 本体への寄付についても記載されています.

Laravel本体に金銭面で貢献したいのであれば、Laravelのファースト・パーティー・サービスを利用してください。

書籍執筆時、開発者のTaylor Otwell氏にコンタクトを取り、金銭面で貢献するには直接寄付したほうが良いか、それとも彼が運営するサービスを利用したほうが良いか尋ねたことがあります。答えはサービスを利用してほしいそうでした。

 
自分はあまり詳しくなかったので,運営会社があるとそのパターンもあるのか,と思いました.例えば,UbuntuCanonical という会社が運営していますが,純粋に Ubuntu に向けた寄付の方法が記載されたページがあるため,直接寄付することが可能です.

www.ubuntulinux.jp

企業と OSS コミュニティの関わり方

個人での寄付であれば,口座とせいぜい家族との相談くらいでなんとか捻出できますが,企業だとそうはいきません.なんらかの組織か責任者が寄付についての意思決定を行うことになります.
 
この OSS への寄付は,いいか悪いかは置いておいて,企業のブランディングにも紐づけられているように見えています.純粋に,儲けさせてもらったからとか,今後発展してほしいから,という気持ち以外に,OSS に貢献している企業イメージがないと採用が伸びないからとか,どこどこの会社に寄付額が負けてるといかんのでとか,そういう判断軸も入ってくるのではないでしょうか.
 
概ね CTO 的な役割の方を中心に,OSS に明るいメンバーで選び,判断していると思います.しかし,企業規模が大きくなると判断材料や社員の意見も多くなるため Open Source Program Office (OSPO) という組織を設置し,そこで諸々を担うパターンも見受けられます.最近だと,そこまで専門的じゃなくても Engineering Office とかの組織が担っているところもあるのかなという感触です.
 
参考までに,以下に NECOSS 貢献活動のページをリンクしておきます.

jpn.nec.com

 

OSPO

OSS はその興りからもわかるとおり,概ねはボランタリーな個人の活動に支えられており,組織的に管理されていないものも数多く存在します.当然マネタイズも考えられていなかったり,突然更新が停止してしまったり,ごく稀に悪意を持って何かを埋め込もうとしたりということもままあります.
 
企業とは全く異なるルールで展開されている文化から生まれたソフトウェアを製品に組み込むとなると,様々な問題や課題が発生します.セキュリティの問題や金銭の問題はどうか,OSS コミュニティの成果物をフリーライドしていないか,権利関係はクリアになっているのか,業務時間で発見したバグを社員が修正する場合どういう扱いになるのか,自社の都合を勝手に押し付け全体の利益を阻害していないか...... などなど,気になることはたくさんあるはずです.
 
たとえばサイボウズはそのあたりのポリシーを整備していて, 前文にはこのように書かれています.

本規程はライセンスに限定して定めるものであるが、OSS に関連する業務はコミュニティ支援等他に数多く存在する。 当該関連業務については別途定めるが、本規程の目指すところである「当社ならびに当社従業員の OSS 関連活動の支援」および「当社がオープンソースコミュニティの良き一員であるようにすること」は一貫して共通するものとする。

cybozu-oss-policy.readthedocs.io  
このように権利関係や業務時間の扱い等が明文化されていれば,チームが細かく分かれても同じ考え方のもとで OSS に関係するコードを書く時間を取り扱えます.
 
またエンジニアではない自分の仕事領域になりますが,実際,OSS "コミュニティ" というくらいなので,ソフトウェア開発が当然主軸にありながらも,他のこともたくさん発生していて労力をかける必要があります.例えば,ユーザーの拡大,ドキュメントの整備,スポンサー集め,国ごとの言語・法令に関する利害のすり合わせ,揉め事の解決など,ヒト・モノ・カネが絡む以上,ソフトウェア開発だけでは済みません.
 
たとえば PHP の界隈だとてきめんさんの mbstring まわりのお話だったり,

speakerdeck.com

ふわせぐさんの Laravel の文字種のバリデーションに関する :ascii オプションの追加まわりのお話だったり,

qiita.com

マルチバイト文字列圏の我々でないと,その苦労がわからないものを伝えていかなければならない場面をちょこちょこ目にします.
 
ちょっと横道にそれますが,自分がよく戦っている PDF とスライドアップロードサービスの文字表示問題も,CJK (China, Japan, Korea) 圏で暮らすからこそ発生してそうな文字化け等があり,やはり欧米圏で開発されているサービスだとこのあたりの問題を体感で理解することは難しいのかなとも感じています.

note.com

 
他にも,OSS コミュニティの入り口としても馴染み深い,カンファレンスやハンズオンイベントなんかは,典型的なソフトウェア開発以外のコミュニティ活動にあたります.周辺の支援というとこのあたりのことを指すのではないでしょうか.
 
ということで色々書きましたが,実際の OSPO の活動を見てもらうのが一番いいので,以下,いくつかの企業の OSPO 設置例等を掲載しておきます.
 
トヨタ自動車
https://www.toyota-tokyo.tech/news/pdf/240830report_ja.pdf
 
日立 www.hitachi.co.jp  
サイバートラスト www.slideshare.net  
サイボウズ speakerdeck.com  

また,この OSPO を企業内に導入するにあたって,LF Research から OSPO 成熟度モデルという概念がまとめられた資料が展開されています.自分もまだきちんと読み下せていませんが,時折思い出しては勉強しなおしています.

www.linuxfoundation.jp

 
この資料は以下のとおり @hsbt さんに X で教えていただいたものです.

おまけ : IPA の動き

IPA の Web サイトには以下のとおり,OSS に関するページが切り出されています.

www.ipa.go.jp

先日,デジタル庁も交えてのオープンソース戦略について議論する会が開かれたようです.自分は行けなかったのですが,中身が非常に気になります(北海道から古川さんが出ているから聞いたら教えてもらえる......?🧐).

www.ipa.go.jp

発表したのはここまで

......だったはず!
 
なんか忘れてたら,当日いたみなさん教えてください.追記できるものは追記します!
 
ということで,温かく受け入れてくださった関西のみなさま,ありがとうございました! みなさんも北海道(任意の都市)に来てくださいね😘
 
茨木で書き始めて,せっかくなので宿を通り過ぎて,宝塚まで温泉に入りにきました.無事にブログが書き上がって最高だ!!!!! 宿に戻るぞ🏃
takaranoyu.jp