積極的にメモっていく姿勢

題名詐欺。更新頻度の低さが売り。

ソフトウェア企業で全員研修すべきは工学倫理じゃないか

自分は工業高校の情報技術科卒で,工業大学の電気電子工学科卒なので,"技術で世界に貢献するためのメンタリティ醸成" にかかる教育的指導を受けて 7 年を過ごし,いまは IT 系の業界に籍を置いています.
 

エンジニアとしての倫理をいつ学ぶのか

工業高校では明確な科目には起こされていませんが,専門科目を教える先生方みんなが「エンジニアとして働くとは」ということを日頃のコミュニケーションの中で触れてくれて,長い時間をかけて教え込まれました(注 : エンジニアとは工学専門性を生かして働く技術者のことであり,決して IT ましてや Web 系のエンジニアのみを指す言葉ではない).

 
実は,工業高校では社会科の先生も結託して,企業倫理だったり工学倫理に関するコラム的なことを授業内で触れてくださることもあります.自分が高校教諭をやっていたときは,社会科の先生と職員室内の雑談でそういうことにも触れてくれると嬉しいですという話もしました.
 
また,大学では工学倫理という講義が当時は一年次の必修科目で存在して,そこで東海村JCO臨海事故雪印乳業食中毒事件について学習し自身の意見をレポートにまとめる機会がありました.
 
今の自分の出身大学である北見工大のシラバスを見ると,工学倫理は二年次で取り扱いがあり,そこでは STAP細胞捏造事件 なんかも取り扱いがあることがわかります.企業として,研究者として工学に触れるということはどういうことか,ということを 15 回の講義で触れることになります.
 
uguisu-v2.office.kitami-it.ac.jp

 
他にも今だったらベネッセ個人情報流出事件なんかが取り上げられるのかなという気がします.現役のみなさんに聞いてみると面白いかもしれません.
 
大学の講義ということになると,どれだけの人間がまともに受けているかわからんだろう,という声もあるような気がしますが,それでも全く触れてこないよりかは,一瞬だとしても話が聞こえてくるだけマシではあります.
 

工学部以外では触れていない説がある

最近だと工学部以外出身のエンジニアは珍しくありません.その場合,もしかするとこの工学倫理に該当する講義や授業を受けることなく,ものをつくって社会に関わっているエンジニアが存在する可能性があります.
 
また,エンジニアでなかったとしても,つくられたものを売る立場,何をつくるか指示する立場の人たちが,ものづくりという業の性質を知ることなく,そして過去の過ちを分析することなく,つくられたものを取り扱って仕事していることになります.
 
きちんと調べてはいませんが,これだけたくさんエンジニア研修資料が公開されていますが,企業に入ってからの新人研修で工学倫理について取り扱っている会社はそう多くないでしょう.先にあげた,雪印やベネッセあたりはやっているでしょうけれども,最近大きくなった Web 企業なんかはまずやっていないんじゃないでしょうか.
 
特に IT に関しては,ソフトウェアオンリーだと人を直接的に死傷させることもないでしょうし,自身が製造プロセスに関わっていたとしても死傷する危険はないでしょうから,ここをイメージするのは難しいのかもしれません.
 
いくらサイバーセキュリティ的にリスクが...... とか,それはユーザーを危険な目に晒すじゃないかと言ったところで,死にも怪我もしないのに何言ってんのコイツみたいな目で見られることもしばしばあるのではないかと思います.
 
そのためサイバーセキュリティに関する教育を組み込もうね,と情シスや CSIRT あるいは PSIRT のみなさんが研修項目をおこして,なんとかソフトウェアをつくる立場での倫理観を養ってもらおうと紛糾している様子も伺えます.
 

エンジニアへの研修だけでは足りない

そう考えると営業や経営企画,広報や採用等の職責に就いている人たちも,工学倫理の考え方を一度通っておいた方がいいような気がしてきます.ソフトウェアを "つくる立場の企業人" としての振る舞いに配慮が行き届かず,エンジニア勢から "危ない会社認定" されたり,社内での打ち合わせの際にも,ユーザーをなんだと思っているんだとエンジニアとぶつかったり,多分いいことがあんまりないと思います.
 
特に,自分は技術広報とか DevRel とか Engineering Office とかそういうふうに呼ばれる,主に Web エンジニア支援のチームで働く方々と近い括りで暮らしていますが「この仕事をしていてこの考え方,正気か......?」と思うときにゾッとするのは大抵,この工学倫理で教わったエンジニアとしての倫理に反することだと思います.
 
エンジニアとそれ以外のわかりあえなさ的な話はしょっちゅう上がってきますが,なんとなく自分の中で一番大きな要因なのはこの工学倫理の通過経験なんじゃないかという気がしています.もちろん,講義を通過していなくても,もともとそういったことが気になる人,倫理観が強い人はいて,必ずしも学んできたことに絡むとも限りませんが,少なくともその気質がない人は通った方がいい道かなと思っています.
 
次,なんらかの機会で新人研修,中途入社の社員研修等を企画する機会があったら話をしてみようと思います.