積極的にメモっていく姿勢

題名詐欺。更新頻度の低さが売り。

やりました「FuraIT #44 - プログラミング教室を作る心構え」

珍しく勉強会を開催して感じたことをブログにまとめてみます.一昔前のだらだら集まる茶の間みたいな空間にも思いを馳せながら,これはこれでいいなと感じた次第です.今回の集まりには今までにないタイプの余韻があって,これからも数カ月に1回,テーマは別でもこういった形の勉強会をやりたくなるような魔力がありました.

furait.connpass.com

 
裏ではまーずくんに「セキュリティ入門」と称して,高校生と大人たちを CTF の世界に吸い込んでもらいました.皆さんいかがでしたでしょうか.楽しんでもらえたのであれば幸いです.講師を務めてくれた師匠もお疲れさまでした.助かりました.これからも富良野旭川でやるときはこき使わせていただきます :)
 

知見をぶつける会


今までの FuraIT はハンズオン系か発表会系を基調とすることが多く,LOCAL DEVELOPER DAY'16 in FURANO などの特別感のあるイベントでしか,今回のようなディスカッション形式の場を設けたことはありませんでした.今までの FuraIT を振り返っても参加者が20人近くまで集まることは稀で,少ない人数ではあるものの指向性やレベルにバラつきがあって,深いところまで追いかけることが難しかった事実があります.(遠方からの参加者を含めても難しかったと感じます)

furait.connpass.com

その点,今回は20名程度がセキュリティと教育に 6 : 4 くらいに分かれて,それぞれの方向に合わせた内容を2展開で開催でき,深さを出すことができました.セキュリティサイドについても実際に手を動かす時間も取れたようでよかったのかなと,外野からではありますが感じています.
 
実際に話を始めるまではどうなるか不安でしたが,結果,座談会方式でおこなって正解でした.もう少し自分が,全体から意見を拾えるように振っていけばよかったかなという反省点もありますが,概ね良好です.中でも CoderDojo Sapporoみつはしさんちとせプログラミング教室JavaDo (リンクは旭川工業高校開催のもの) の 山川先生 と私の事例紹介を主軸に,実際の教室運営を元に話ができたのは幸いでした.机上の空論ではなく,しっかりと地に足のついた話ができた実感があります.
 

それぞれの教室

FuraIT & ふらのみらいらぼ ICT ワークショップ

  • 西原が高教研情報部会のワークショップで使った資料を紹介
    • pdf にしてあるスライドをじわじわ紹介
  • 2017年1月からプレ運営,当時は Python を触る教室を展開,10名弱の参加
  • 同年4月から本格開催,C# を用いた U-16プログラミングコンテストへの挑戦
    • 小4から高3までの広いカバー範囲,高校生はメンター,小中学生が対象
  • 富良野から親子ともども旭川へ向かい,大会に参加・観戦
    • 富良野圏域参加は8名の小中学生,みらいらぼからは4名
    • ほかは中富良野中学校,富良野緑峰高等学校 情報ビジネス科
  • 以降,大人もプログラミングに挑戦したいと FuraIT.fuel に発展
  • 課題は「指導者がいなくなった後どうなるか」
    • 対策として少年団をイメージした保護者への技術継承
    • FuraIT.fuel でそれを行っていく

CoderDojo Sapporo

  • 2017年からスタート,Scratch を主軸とした「やりたいことをサポートする」
  • 札幌では札幌札幌東の2団体が道場を開いている
    • が,メンターはほぼ同じメンツで構成されている
    • 互いに被らないように隔週で開くも,メンターは毎週出ずっぱり
    • 疲弊して運営が成り立たなくなることが心配
  • 「やりたいこと」がない子が「2020年のプログラミング教育必修化」の波で増加
    • 親主導で道場へ参加する子たちに目標がないという課題
    • 見つかればいいが,見つからないときはメンターも困り果て,遊ばせるしかない
    • Scratch でゲームができる場になってしまわないように注意したい
  • 札幌という都市規模から会場が手狭になってしまいがち
    • 使用している場所は ものづくりオフィス SHARE
    • うれしいことに許容量的に断らないとならない場面もある
    • 一方で個別担任制を敷くと回らなくなることもある
      • 最初の担当だけ決めて,みんなで見回るように変更,うまくいっている
  • メンターがいろいろできるぞ!と作品例その他を示す機会をぼちぼち持っている
    • 何にも興味を示さずに飽きてしまう子には有効でない
    • 一方で目的意識のある子に対しては効果的

ちとせプログラミング教室

  • 2017年から CoderDojo Chitose として開始を目論んでいたが,大学の事業としてやることに
    • 大学の事業としてやるから CoderDojo ではなくなった
  • プログラミング,コーディングというよりコンピューティングを学ばせたい
    • この前は micro:bit を触る会を開いた
    • さすがに電波や変調については難しかったようだ......
  • 場所は まちライブラリー@千歳タウンプラザ を無料で使用させてもらっている
    • 会場の運営団体も柔軟で助かっている
  • 運営は大学生たちに頑張ってもらっている
    • 大学生にも教える力がつくし,小中学生は体験できる一石二鳥
  • 情報技術の世界に入ってくる本当の最初の入り口にしたい
    • そういう意味で CoderDojo には初級から中級の橋渡しを望んでいる
    • 「入門」「初級」にもレベル分けをしてコミュニティを分けてはどうか
    • そうしないとカバー範囲が広くて疲れるのでは

それぞれの視点から

教育者たち

  • 学習指導要領に沿って素晴らしい授業ができる教員は一握り
    • すごい先生がやったことを劣化コピーして広まっていく
    • 学校には全教科で「プログラミング的思考」を取り込むお達しがあるが......
  • 普段からかかわる教員にできること,できないことがある
    • 日ごろからイベントや人脈を子供たちにつないでいくなど,地味なことは可能
    • 行動を変えるような刺激的な示唆は普段からかかわる教員には難しい
      • そこを勉強会などで出会った大人 (別の学校の教員でも可) に託したい
  • 工業高校の観点から
    • 情報技術科でないと授業でゴリゴリ技術はできない
    • どの学科も情報技術基礎はあるが,検定をとるための教育に傾く
    • 入るときは「ゲーム」など GUI のイメージしかないが,入ったら CUI ......
      • ここが第一挫折ポイントという感じがある
      • for 文難しい...... 関数...... ポインタ...... つらいよー → END
    • 2年生からでも GUI で実際にものを作っていく授業を展開している
      • が,オブジェクト指向がどうとかそういった話はない
      • 単純に実装する楽しさを最初に感じ取ってもらいたい
      • 詳しい話は組んでいく過程,組み終わってから
    • 電気科その他では放課後の学科活動でなければ無理
  • 普通科情報の観点から
    • 実際にその道を目指すわけではないので,紹介程度の内容が多い
      • 情報系の道 (専門学校) に進む子は多くはない
    • sAccesss - データベース,ドリトル - タートルグラフィック を活用
      • 実務的なところは無視して,頭を使う教育に注力している
    • 社会と情報,情報の科学の2つから選択して情報の授業を行う
      • 2単位 (週に2時間で展開) のため実習を濃くするために工夫が必要

親たち

  • 必修化と言っているが教えられるのか
    • 先生の先生がいないので難しいのではないか
    • やはりできる人の授業が確立してからコピーされていく
  • 大人側も積極的に勉強していく姿勢を持たないと厳しいか
    • 学校が頼りにならない以上,その方が子供たちもいいと思う
    • 教えられる人を増やす活動が大切だ

社会人たち

  • 仕事をしながらボランティアを続ける難しさ
    • 教える側少人数では仕事との関係で全員つけない日も珍しくない
  • 技術をコツコツ学ぶ土壌は注目されているが,ビジネス的な視点はどうか
    • 東京のような若い希望に投資する文化がまずない
    • せっかくいい案を思いついてもそれを試せる土台が皆無
    • 特に田舎と都会の格差が大きいと感じている
    • 技術の部分は学校でも身に付けられる可能性があるが,ビジネスは難しい
    • 発表や製作についての体験は積めるが,同じくビジネスは難しい

どうすればいいかな

結局,一つずつ丁寧に事例と課題を追って行くと「教育を受ける側のやる気を引き出す工夫」が不可欠ということにたどり着きました.まぁ,あたりまえなんですが,始めるとどうしても目先の運営に手一杯になってしまって,視野狭窄に陥りがちです.普段から開いている教室は,極力ルーティンワークになるように事務的な枠を用意して,実際の教育的な部分のみに頭を使えるように工夫しなければなりません.そうして,数カ月に一度,子供たち自身がいろいろな作品や事業の紹介を受ける会を設けておくことで「やりたい」という気持ちを引き起こす.そんな機会を意識的に持たなければという話になりました.
 
「普段,関わりのある大人が言うことと全く同じことを他の人が言う必要性」についても触れられました.学校の担任教員がいくら言っても変わらない子が,外のイベントで全く同じ話を聞いてやる気になったという,教員あるあるが飛び出て,確かにそうだなぁという空気に.それも,小中学生に対しては高校生が,高校生に対しては大学生が,大学生に対しては大人が,といったように「1段階上の先輩の言葉」が重たく響くという共通認識も浮き出てきました.
 
自分たちのイベントでも,このあたりを少し意識して運営していければ,もっと良い影響を与えられる FuraIT になるのかなぁと漠然と思っているのでした.がんばりましょう.最後になりましたが,当日お越しになった皆さん,ありがとうございました.おかしなところあればご指摘ください.