技術系勉強会コミュニティにお世話になりはじめて 18 年が経ち,後進世代も増えてきて,中堅の中の若手域に足を突っ込む頃合いなのかなと感じています.
そこで,自分が体験してきた 18 年と先輩方から聞いたお話(概ね 1980 年代から)を踏まえて,ここ最近の情報技術系の勉強会とコミュニティ文化について,大枠を知ることのできる資料をこさえました.
この資料をつくるきっかけは,Rails Girls Sapporo 2nd の開催でした.ここで技術系のコミュニティについて紹介してほしいと,ご依頼を受けて話をしに伺った形です.
railsgirls.com
このイベントの参加者について,少なくとも今回の参加者は勉強会やコミュニティの文化に触れたことがなく,プログラミングについても触れて日が浅い方が比較的多いことを事前に教えてもらいました.
そうであれば,せっかくなのでこれから勉強会やコミュニティに入って行きやすくなるように,そもそもその活動は何なんですか?を説明するのがよいかと感じ,その方向で提案をしました.自分もそういった,さわりがまとまった資料を持っていなかったので,これを好機と感じて着手しました.
作った資料は以下のとおりです.
www.docswell.com
今のコミュニティは難しい
前職の新人研修でも同様の話をしていますが,今の情報技術系の勉強会やコミュニティを取り巻く状況は非常に難しいものになっていると感じています.
せっかくなのでその資料もリンクしておきます.
この研修資料では "難しいぞ" くらいにおさめている部分を,新しく作った資料では,様々な視点から大きく分類した勉強会やコミュニティについて紹介しています.
会社に所属して外に出ていく視点,そして東京を前提とする場合は,もはや企業の手が入った勉強会やコミュニティの数が多く,業務の延長線上の振る舞いをしても違和感はないでしょうし,業務の一環で参加するのであれば,企業側の要望を汲んで参加することになるでしょうから,"人の庭を荒らすな" くらいしか注意事項はないかなと思います.
一方で,Rails Girls Sapporo 2nd の参加者のみなさんの中には,そういった職業エンジニアを目指していない方もいるでしょうし,逆にキャリアアップのために参加を考えている方もいるでしょうから,両視点からの説明が必要でした.
趣味的に技術に触れる人たち,OSS への貢献のために参画したい人たち,キャリアや仕事の成果のために参画したい人たち,プライベート空間により近い仲間探しにきている人たち...... そのひとたちに向けて,主催が趣味的な人たち,OSS コミュニティの人たち,企業の人たち(採用等のねらいがある人たち,そうではない OSS 等の集まりの人たち,製品を広めたい人たち)...... たった二つの視点でもこのとおりです.
それに,勉強会の形式や温度感,イベント外の時間の関係のつくりかた,勉強会やカンファレンス自体の探し方など,とにかく一発目に自力で足を踏み入れるには難易度が高すぎる.
最初の一歩を支えてくれる人に如何に巡り合うかが鍵となり,そこにたどり着けなければ,今回のスライドで触れたような内容にまつわる情報を集めては選別して,参加を決めるしかないわけです.
しかも,その最初の人がどのクラスタの人かによって,情報には偏りが出るし.趣味的な人と特定企業に表彰されることを目指す人とでは,ほぼ正面から意見がぶつかるしで,初心者の頭の上で喧嘩し始めちゃったりして......
「よし,勉強会にいこう!」と思った人を,そういう状況に巻き込みたくない思いで,この資料をつくりました.どうか,みんなが平和に技術に向き合えますように.
北海道の技術コミュニティ
Rails Girls Sapporo 2nd 当日は省きましたが,せっかくなので北海道内でじわじわ活動している,各地のコミュニティについて,かいつまんで紹介したいと思います.
先に断っておくと,特に自分は趣味的な集まりと OSS の集まりに顔を出すことが多いです.特定企業の活動については,ただ見に行く程度の参加をすることも,基本的にはありません.ですから,紹介するものも自分が参加するものに偏ります.
また,北海道は比較的,活発に活動中のコミュニティの量も多い地域です.正直,今回の紹介では,自分が行くタイプの趣味的 or OSS のコミュニティを全部はカバーしきれないので,こういう勉強会ないかな? と思ったら調べてみることをおすすめします.
とにかく connpass のリンクを羅列いたしますので,そこから最近の開催状況や,過去の発表資料等をご覧になって,空気的に合うかもとか,見てみたいかもの気持ちを高めてください.
ゆるい勉強会@旭川
FuraIT(ふらいと)@富良野
Okhotsk DEW Community@オホーツク
TechRAMEN Conference@{旭川+富良野+オホーツク}
えびてく@江別(野幌)
千歳ゆるい勉強会@千歳
函館ゆるすぎる勉強会@函館
※ はこだて未来大のサークル「マリカン (Mariners’ conference)」もいい会です.
JMLT@{釧路,札幌など}
函館本線沿線勉強会@函館本線沿いの都市全て
Sapporo Enginner Base@札幌
LOCAL@札幌
Java Do - Javaユーザーグループ北海道
ゆるWeb勉強会@札幌
hokkaido.js@北海道内各地
北海道もくもく会@{釧路,北見,帯広,足寄}
勉強会の自由を謳歌できる北海道を満喫してほしい
最後に,ソフトウェアの自由について活動しているリチャード・ストールマン氏に,山形浩生氏が行なった 1997 年のインタビューの一説を紹介しつつ,強めの思想を開陳しますので,重いわと思われた方は,この辺で読むのを止めてもいいかもしれません(読んでほしいから書くんだけど,それは読者の自由なので).
インタビューはこれ
web.archive.org
自分の感想がこれ
5 ページ目最後,技術コミュニティの運営評価で似たようなことを思わんでもない
— 口座が泣いている転職活動中の旭川から小平市等の各地に飛び立つ地方ITコミュニティ盛り上げ大臣とみお (@tomio2480) 2025年9月28日
> ぼくは営利に反対したことはない。ソフトの販売にも賛成だよ。ぼくが問題にしているのは、自分でなおせない、人に分け与えることができない、ということなんだ。そういう自由を奪うのはいけない。自由の問題。
今の道内の技術系コミュニティのバランスは悪くない
今の技術コミュニティ文化はこれまでの積み重ねそのものであり,"勉強会","カンファレンス","コミュニティ" についてそれぞれが自由に解釈して,先人のみなさんが自身にとって実になる空間を,自分たちで作り出した結果です.
今の北海道はそれらの積み重ねが効いていると言ってもいいかなと思います.様々な自由な勉強会が各地にあり,また,札幌では企業や製品ユーザーによるユーザーコミュニティもそれなりに存在します.両方の人たちが共存する地域です.
これらの人たちは,どちらのタイプの勉強会に出る方もおられますが,自分の出ない側の勉強会と全く絡むことなく,適切な距離感を保ったままの方もいらっしゃいます.
真の多様性はこういうことで,うまいことお互いを害することなく,どちらも存在できる状況です.今の形は理想的といえるのではないでしょうか.何も無理に一緒に何かをやる必要もないし,逆に交わってはいけないなんてこともありません.
コミュニティの自由は "わかりやすさ" で損なわれていく
ついぞコミュニティもビジネスのツールとして活用されるようになった今,そのフレームワークに則らなければ,技術コミュニティではない,と断ずる人もいますが,そんなことはありません.
書籍をはじめとするノウハウは,集客やビジネスへの経路,企業内の成果へのつなぎ方についても記載がなされており,それらを満たさないといけないかのように感じる方もおられるでしょう.
もちろん,Developer Relations やカスタマーサクセスの仕事をされている方は,これらのノウハウに則る形で仕事を進めていくことになるでしょう.
しかしもし,自分で勉強会を開催しようと思って「軽く趣味で技術の話をしたいだけなのに,ビジネスのこともやらないとダメなの......?」と心が折れてしまった方におかれましては,本来,そんなことは全く関係ないので,自由な勉強会活動をしてほしいと強く思います.
自由にコミュニティが活動できる状態とは,どういった勉強会を運営していれば評価されるとか,こういうことをやれば認められるとか,そういった画一的な評価で統一されたものから最も遠く,それぞれの価値を認めていく大きな空間です.
どういうコミュニティであれば正解か,どういう運営をすれば失敗しないか...... このあたりを考えてしまうのは仕方ないと思います.でもコミュニティは "同じ志を持った,利害の一致する集団" ですので,コミュニティ毎に成功の定義は異なるはずです.
だからこそ自由にやれないと,特定の評価軸のみに適合したコミュニティ以外がやっていけないことになり,様々な自由な活動が制限されてしまうのです.画一的評価をコミュニティに当てはめることは,そういった観点からは馴染まないと考えます.
当然,ほかの人たちの権利を害するものや,公序良俗に反するもの,特定の誰かに利益が集中するように仕向けられた会,他者に直接的に害を与えにいく会なんかは,許されるべきではありません.
しかし,それらに該当しない範囲であれば,レベル感,速度感,構成するメンツのクラスタ,価値を感じるポイントなど,それぞれが自由に定めて,それぞれの信じる拠り所に集まって活動する機会は守られて然るべきとも考えます.
当たり前でもなければ特別でもない
もしかしたら次行こうと思っていた勉強会は,明日なくなっているかもしれないし,逆に,今回しかチャンスがない!と思っていた勉強会が毎週開催し始める,なんてこともあるかもしれません.
人間のすることですから,基本的には気まぐれです.それでも続いているのは,技術がずっとおもしろいからなのかなと思います.
情報処理学会の巻頭コラムに寄せられた,和田英一先生の記事の一節を紹介します.
note.com
いうまでもなく,計算機とネットワークは総合的には社会の加速度的進歩に貢献した.50年前には想像できなかった便利な生活環境を実現させた.その推進力が計算機科学だったことを世の中は知らないだろうが,元計算機科学者の諸氏は失業に落胆せず,成就したことを大いに自慢してよい.
私事だが,まだプログラム書き,プログラムハックを楽しんでいる.与えられたプログラミング言語の機能を組み合わせ,思った通りに結果が出る瞬間が好きだからで,計算機科学者かどうかは関係ない.
計算機は社会システムに組み込まれ,計算機科学の専門家の手を離れていったが,それ自体のおもしろさは変わることなく,人を惹きつけ続けている.そんな思いを読み取りました.
こうした技術自体のおもしろさに惹きつけられた人たちと,技術のことについて話ができ,新しい情報に触れられる会である,技術系勉強会やコミュニティも同様に人々を惹きつけるのでしょう.
技術もコミュニティも資本主義社会のツールとしての側面だけでなく,自分たちの手で作り上げられる自由の側面も大事にしていきたいものです.
