昨年 2019 年の #osc19tk で展示を行っていた関東近辺の CoderDojo のみなさんにお話をきいて,自分が住んでいる小平市の CoderDojo を見に行って何かを発表したりしなかったりしています.出席率は色々あって半分くらいだと思います.
Slack で交流,LINE オープンチャットで情報提供がされています.Twitter もあるので,公開情報に関してはそちらからアクセスするのがいいかもしれません.
例によって新型コロナウイルスの影響で小平市も公民館がお休みになってしまい,オンライン開催を余儀なくされています.それからといったもの CoderDojo こだいらはオンライン開催を週一で行っており,毎週元気に活動しています.自分はチラ見して何かネタを投下できるときにする係を勝手にしています.
小学生や中学生の層が厚くマインクラフトの波が大きく見えている中,Unity (C#) や JavaFX 等を用いたプログラミングや動画制作にいそしむニンジャもおり,幅の広さを感じているところです.自分ができることはあまりないのですが,今回ウケがそこそこよかった「反磁性体の浮遊実験キット」についてまとめておこうと思います.
反磁性体
そもそも「磁性体」という言葉を聞いたことがない,という方も多いのかもしれません.前々職の工業高校の電気系教諭ですと,電気基礎(これからは電気回路)や電気機器という科目で磁性体について取り扱いますので,これに関する簡単な知識と実験の経験を積むことになります.
磁性体の説明はここがいい感じにまとまっていました.
eetimes.jp
電気基礎でこれらを初めて取り扱うのは磁気関係の単元ですから,高1の夏から秋にかけての学校が多いと思われます.そこでも出てくるレベルだと,式を除けば以下のような話を勉強するのではないでしょうか.
具体的に言うと,強磁性体は磁石にカチッとくっつく材料とイメージすれば,大方まちがいはありません.全く影響を受けていないように見える常磁性体や反磁性体も,実はくっつく方向(常磁性体)か離れる方向(反磁性体)に力が働いています.主な材料の比透磁率 μr については Wikipedia にもまとまっていましたので,そちらをご覧ください.
見てもらうとわかるとおり,強磁性体の比透磁率 μr は数百や数千を超えている一方で,常磁性体や反磁性体の比透磁率 μr は 1 前後のごくわずかな範囲に収まっています.日常生活で感じ取ることができないのは,この数値からもわかると思います.
これを感じるために考えられたのが,今回見せた実験キットなのでしょう.Amazon を見て回ると似たようなものを見つけることができました.
みんな大好きマグファインの実験キットもありました.
実際の様子は以下のとおりです.
この前の CoderDojo こだいら(オンライン) で見せたけど,イマイチ上手に映せなかった反磁性体が浮く様子をここに上げておく. pic.twitter.com/60Zt6O8YYt
— 年末年始が体調不良で消えたタスク蓄積代表選手(消化中) (@tomio2480) 2020年4月13日
自分が電気基礎を担当したクラスはこれを見せつけられているはず(たしかどのクラスにも持って行ったはずなんだよな).
強い磁石(今回はネオジム磁石っぽい)の上にさらすと,外の磁界の強さが大きいために反発しようとする力も比して大きくなり,軽量である反磁性体を浮かせることができる,ということです.買ったときに反磁性材料は「ビスマス」と言っていた気がするんだけど,もしかすると「カーボン(炭素)」かもしれません.
どこに使われているのか
磁性材料は結構いろんなところで使われています.まず,モーターを動作させるためには必要不可欠です.外側が金属でできているのも大いに関係があります.特に小さな電流から大きな磁束密度を得ようとすると,比透磁率の高い材料を使う必要があります.これは電磁石を作るときにエナメル線をまいただけのものよりも,釘やネジなどの鉄製の芯に巻き付けたものの方が強い磁力を得られることからもわかると思います.
特に誘導電動機(インダクションモーター)や同期電動機(シンクロナスモーター)といった交流電力を用いて駆動させるモーターの場合,この磁性材料の特性によって電力損失が大きく異なるため,より電力を無駄にすることなく動かすために鉄に数パーセントのケイ素を混ぜた鋼板(電磁鋼板)を用いています.
また,コンピュータのメモリも磁気を用いたものが主流だった時期がありました.ただご存じのとおり,補助記憶装置のハードディスクは今でも健在です.メモリは既に半導体メモリにとって代わられましたが,ハードディスクも SSD に変わっていくと考えると,市井で磁気記憶装置を見ることのない時代がくるのかもしれません.
これらのように,磁性材料の性質によって「磁石」「記憶装置」など使い道が変わってきます.比透磁率の大きさや,外の磁界がなくなったときに維持できる磁束密度(残留磁気 Br)というパラメータ,その残留磁気 Br をゼロにするために必要な磁界の強さ(保持力 Hc)などの値を見ることで,どの材料が何に向いているのかを見極められます.
あまり注目されることのないところかもしれませんが,かなり奥深い磁気の分野について,ほんの少しだけ詳しくなるきっかけとなったのではないでしょうか.自分も授業をしないので思い出すこともなくなりましたが,こういった機会があってノートや教科書を見返すきっかけとなりました.比透磁率に関しては久しぶりに部屋の理科年表を開きました.
仕事には直結しませんが,勉強するとなんかいい気分ですね.