積極的にメモっていく姿勢

題名詐欺。更新頻度の低さが売り。

IT勉強会の学びの最大化とIT業界の発展

先日,岡山で開催された勉強会で発表してきました.題は「痩せた IT コミュニティと引き締まった IT コミュニティの違い」です.
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岡山で参加したイベントは「合同勉強会 in 大都会岡山 -2023 Winter-」です.夜に開催された「忘年会議2023 in 岡山城 presented by finet」にも参加してきました.岡山城で LT をやる実績も解除しました.岡山城では「北海道異常IT勉強会2023年中間報告」を再演発表してきました.
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また,さらにこの岡山の勉強会に行くついでに,神戸三宮の勉強会である 三宮.dev の「今年を振り返ろう!LT大会」にも足を運びました.ここでは,自分の connpass のイベント参加履歴を流し見して,今年一年どんなイベントがあったかをおしゃべりしてきました.資料はないです.
 
これらの勉強会ではじめてお会いする方もたくさんいらっしゃって,いろいろ巡る中で自分の関わる勉強会像がどんどん言語化されていきました.その記憶を辿って記事にしようと思い立ったのが本記事です.

 

学びの量を最大化するアプローチが好み

IT コミュニティの価値というと「コミュニティ」の部分に注目が集まって,人との関係性から生み出される様々なお得ポイントについて論じられる傾向にあると感じています.しかし,自分は人間同士の関係性をよくするより*1も,飛び交う情報と参加した個人の学びの量の最大化に魅力を感じていることがわかってきました.過去の発表でも,IT コミュニティを鉄道駅に例えたり,コミュニティを三要素に分解したりと,人には注目せず,仕組みや環境に焦点を当てた話をしています.特に最近はその傾向が強いです.
 
IT コミュニティの関連要素を雑に二分して「人間関係」と「学びの量」として,どちらの側から IT コミュニティの満足度を高めるアプローチをするかを考えたときに,人間関係側から取りたければコミュニケーションを工夫することになるでしょうし,学びの量側から取りたければコモンズ的な観点からのアプローチになるでしょう.ここでいうコモンズ的という概念に関しては,ドクセルにアップしてある資料に詳細な説明は譲ります.簡単にいうと,資源(情報,学び)をみんなで獲得できる整備を行うのがコモンズ的と言えるかなという感覚です.
 
これでいうと自分は明らかにコモンズ的発想で IT コミュニティを整備しており,学びの絶対量をどうにかして増やそうと画策している時間が長いです.もちろん,そのためにコミュニケーション方法を工夫して,人間関係を改善して情報を引き出すということもしていますが,居心地のためにやっているわけではなくて,あくまでも学びの量を最大化するために行っている取り組みになります.
 

ファシリテーターより環境整備のおじさんをやりたい

IT コミュニティなので人を集めて何かをするわけですが,ここで集まってくれた人たちに注目して,その人たちが快適に学びを進められるよう,ファシリテートに力を込める方もいらっしゃるかと思います.もちろん自分もそういった振る舞いもしますが,それ以上に,来てくださった方が自分の考えた勉強会システムに乗っかって,学びの空間としてこの会を満喫できているかが気になります.
 
話したいことが話せているか,来てくれている他の人と交流できているか,新しい発見はあったか,話してみたいと思える人を見つけられたか...... これらは発表を聞いている時間の外で,参加者の学びが大きくなるかどうかという点に興味があるから気になるポイントでもあります.つまり休憩時間でも,勉強会が終わった後でも,SNS でつながった後でも,学びを獲得できる状況がこの IT コミュニティに参加することで増えているか,という視点で勉強会を見つめています.
 

会社でもそういう視点で仕事ができそう

この観点は「組織に所属する個人のレベルアップを支援する」という表現をすると,開発者を抱える会社であれば,やってもいいかなという取り組みに聞こえるかと思います.実際,自分の所属するチームでは開発者のスキルアップについて考えることも仕事の範囲です.IT コミュニティでも,会社でも,どちらでも学びの量が最大化されるような空間や仕組みづくりに取り組むことは必要なことで,より効果の高い施策を展開できれば,IT コミュニティとして,組織としての魅力付けにもつながります.
 
概ね,IT 企業に所属して IT コミュニティに出ていくとなると,広報や採用といった理由づけが必要になって,いわゆる草の根の IT コミュニティを応援するような動きはやりづらい傾向にあるかなという認識です.しかし,自分のアプローチは必ずしも 100 % そうではありません.
 
自分の所属チームのマネージャーが書いた記事を元に説明すると自分は,

魅力付け→採用→オンボーディング→スキル開発→報酬→退職

この 6 段階のうちスキル開発に主軸を置き,各所で取り組みを広げることで,別のチームメンバーが魅力付けや採用等の外部活動を行う際の摩擦を減らすという建て付けで活動することにしました.
 
こう書くと,利益に直結する活動だと一目でわからないと,着手できないんじゃないか,と思われるかもしれません.もちろんそうではありません.利益になるとわかっているものだけにリソースを割く,という姿勢では何も新しい価値は見つけられないし,開拓して裾野を広げることもできません.じゃあ,闇雲にやるかというとそうでもなくて,これから伸びるぞ,あるいは伸ばすぞ,と気持ちが動いたところに馳せ参じるのです.そして,そこにいる人たちと気持ちを一緒にして IT コミュニティを育てていく活動をやっていくのです.
 
つまり,自分たちの活動は,技術情報の流通活動を主体とした成長環境の整備であり,その環境を活用して成長した人たちや大きくなった場をどうするかは,他の人たちに委ねるというものです.
 

自己責任で目指すべきと偉ぶれるほどの業界か

そんなことするの大変だとか,そもそも人がいるところに行けばいいのにとか,そもそも強い人を探しにいってその人を一本釣りすればいいのにとか,まあ色々言われますが,そういう姿勢で継続的にやっていけるのかは甚だ疑問です.何が疑問かというと,誰が育ててくれているのか,誰が場を維持してくれているのか,ここを理解した上でそのような姿勢でいるのか,という疑問です.
 
もちろん,会社が小さいうちはそうも言ってられないでしょうし,ある程度,自分で育っていける人か育った状態の人を採用して,会社をなんとかする必要もあるでしょう.ただ,今自分がいる会社はそのフェーズではありません.ある程度大きくなった会社で,ある程度の人数の開発者がいて,新卒も中途も採用している中で果たして,育てる部分に力を込めずして胸を張って人を受け入れられるのかと問いかけたいです.
 
民間企業にその責任はないよ,という意見もわかります.確かにそうだと思いますが,じゃあこれから業界を支える人は誰が育ててくれるのか,また目指す側が努力して入ってくるべき業界であって企業側が何もしなくても持続可能なのか,これについて回答できる方はそう多くないかなと思います.
 
自分は工業高校の教諭経験と専門学校の講師経験の中で,進路指導にあたり企業の方とお話ししたり,学生を指導することもありました.特に印象的な出来事として,電気工事業界や自動車業界の人手不足が加速する中で,高校生に仕事を理解してもらうために何ができるか,という問いかけをインターンシップのお願いに伺った際にお話しいただいたり,進路室までお越しいただいた企業の方が,床に膝をついて,どんな子でも元気に働いてもらえるよう頑張るので,どうかうちを受けさせてもらえませんか,と懇願されたり,大変な苦境に立たされている方々の姿を見てきました.
 
一方で IT 企業になるとまだまだ志望があるからなのか,建設系などのみなさんとは違って,学生にとんでもない時間にとんでもないスケジュールで提出物や電話を要求したり,学生側の業界研究や企業研究が足りないと言って自分たちの説明不足の可能性を顧みない発言がなされたり,殿様商売的な振る舞いが目に余る場面もありました.どこの企業もそうだとは言いませんし,真摯に丁寧に応対くださる方もいらっしゃるので,十把一絡げにとは言いませんが,そういった経験もあります.
 

育てずして維持や発展を見込むのは無理がある

いつ,何が起きて,人材の供給が絶たれ,事業が成り行かなくなるか,きっと誰にもわかりません.しかしそれは,日頃から人を育てる部分に貢献していれば,人材不足の状況や育てる側の課題がよく見えるようになり,早い段階で手を打てる可能性が高まるのではないでしょうか.
 
だからこそ,自分は民間企業に所属しながら,成長環境の一端を担う相手として,草の根の IT コミュニティとさえも同じ気持ちで維持・発展に寄与できることが素晴らしいことだと感じています.お世話になって魅了された IT 業界の頑健さに寄与できる喜びもここにあります.ですから,一企業だけが抜け駆けして自分たちだけが成長した人を刈り取ろうとしているうちは,成長できる環境をより広くするねらいは達成できないのだろうと思っています.
 
あえてこの表現をしますが,敵は同じ業界の企業ではありません.隣の別業界です.別の業界が丁寧に人と接し,人を育て,なんなら報酬も多く与えて厚遇した場合,業界丸ごと勝ち目がなくなります.生徒や学生を見ていても,保護者と話していても思いますが,より丁寧に応対してくれた企業や業界が当然人気です.親切にしてもらえているから,会社に入ってからも大丈夫だろう,と本人も保護者も教員もいずれも納得して行き先を選ぶのです.
 
業界の実態なんて一企業の努力程度ではどうにもならんのです.そのときに我々の業界が選ばれる自信はありますか?
 

*1:IT コミュニティを通じていろいろなことを学ぶ,という一点において過激なことを言えば,人間関係がどうなのかということは度外視したい要素です.ただ,関係性のよさ(あるいは悪さ)ゆえに生み出される相乗効果や緊張感などのおかげでよりおもしろい情報が出てくることも考えられます.これを踏まえて,改めて書いておくと,完全に人間関係は無視すべき要素である,という主張ではありません.IT コミュニティとだけ表現すれば,IT を通じて仲良くよしなにする集団であればヨシ!でもいいのです.本記事は自分自身が「単位空間あたりの学びの量に魅力を感じているんだ」という個人的な感想を書いたものになります.