このへんの話で思い出しました
若干自分と主張が異なるかもと思ったのは,ぼくは若返りは年寄りの願いでしかなく,実は本当に必要なのは若手が望むコミュニティを妨げないことなので,誘うことと同様に新しく立てることについての情報も出していくべきだよなというところです.居心地の良さを優先することもいいよね的な?
— 旭川から技術書典15【う01】で情報処理学会の店番をする地方ITコミュニティ盛り上げ大臣とみお (@tomio2480) 2023年10月10日
1人の学生が提唱する、技術コミュニティに若手をどう取り込むか戦略 2023 | ドクセル www.docswell.com
このスライドは「若者がこないなぁ」と言っているコミュニティ所属メンバーに,若者側から問題提起をする素晴らしい資料です.言わないとわからないこと,たくさんありますからね.
若者が入って来ない問題
よく言われている問題である一方,個人的にはそこじゃないような,という思いがあります.もちろん,それぞれ個人に最も近いコミュニティをひとつだけ見たときには,若者が入ってこない問題が発生しているところもあるかなと感じます.でも,もう一段,二段広い範囲で見てみると,実はきちんと若者はいて,十分元気に活動できているなんてこともあるかな,とも感じています.
"コミュニティ" と曖昧な対象を持ち上げて,若者とこれもまた曖昧な対象がやってこないと話をしていても,正直どうもならんのでは? というのが正直な気持ちです.
ここで,
- 自分たちの見える範囲の同じ集団に,若者がいないことを解消したい
- 自分たちの集団とは別の集団まで視野を広げても,若者がいないことを解消したい
ここの区別がついているか,改めて確認してはどうかと提案したいです.
自分の所属するコミュニティに若者が入ってこないのはそういうもの
冷静に考えて,10 歳も 20 歳も違う人たちがうまくやるのって難しいと思いませんか? 実はかなりすごいことじゃないですか? 少なくとも自分はうまくいってる方が異常だとすら思います.すごいことなんです.技術コンテンツは年代を超えて,みなに平等に楽しみを与えてくれると信じているかもしれませんが,それら技術の理解を支えているのはそれぞれの生活文化背景や義務教育等での学びにほかなりません.10 年も経てば相当異なるもので,共通の暗黙知を抱えた状態を作るのは難しいことです.
学校教育の基礎である学習指導要領ですら,10 年に一度更新がなされます.そうなれば 10 年の差というのは,教科書に書いてあったことすらも異なる人たちを生み出すわけです.
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OSS 開発のように一つの対象を改善していくとなると,そういった文化背景などは除かれた,単純に目の前の目標や思想のみでコミュニケーションを取れる可能性も上がるとは思います.ただ,こと技術コミュニティと呼ばれる単一の集団に関しては,技術を媒介にしているとはいえ,結局人間の集まりという性質上,中心となる技術以外にも多岐に渡ってコミュニケーションが発生しますし,そういった幅広なコミュニケーションにより一体感が生まれていくことも少なくありません.
そうするとどうしても,時代的に話が噛み合わなかったり,言葉にできないもやもやみたいなものが解消できなかったり,うまくいかないです.ここで「同志だ......!」と距離感を間違えると,技術の部分はいいけれど,それ以外の部分も分かり合えると勘違いして,どんどん疎外感を作り出してしまうなんてこともよく見受けられます.同じコミュニティにいくら所属していても,分かり合えることなんてそう多くはありません.
似たような集団が別世代によって作られることを阻んではならない
とはいえ,一緒にやろうよという姿勢は大事です.無理に引きずりこむのがいただけないだけで,合う人同志でうまくやりつつ,ときには他の集団とも仲良くやるというのがちょうどいいのです.「所属した組織自体を改革していこう!」という姿勢もあっぱれですが,誰がそれを望んでいて,変わった先に誰の満足が待っているのか,よく考えないといけません.
放っておけばこの先衰退する以外ない組織だったとしても,所属する人々が維持を求めているのなら,自身が達成したい目標は他で満たすほかありません.実際,自分はここで心が折れていくつかの組織を去りました.自分を待ってくれている他の組織のことを思えば,ここで踏ん張る意味がどれくらいあるのか,と自問したときに,去る選択が一番だと判断したためです.
このへんの話は↓のスライドで軽く触れているので,読んでみてください.15 ページしかないので超軽量です.
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権威付けの問題で巨大組織を目指しているため,他に組織ができそうなら吸い込む.という政治もわかりますが,それをやって本当に業界や分野は大きくなるのかな? という疑問があります.別にそれもどうでもいいから,自分たちが一番でありたいというのならお手上げですが,そうじゃないなら考え直した方がいいと思います.
業界全体で多様になればいいと考えたほうが自然
存在すること自体が業界や分野全体に悪影響を及ぼすというのなら話は別ですが,基本的にはいくつものコミュニティやカンファレンスがあって,それぞれで文化形成される方が,業界や分野全体としてより多くの人に魅力的に映るんじゃないかなと思います.
その多様性が年代であるのか,技術の深さや狭さであるのか,ビジネス的な面あるいは趣味的な面からなのか,それも様々でしょうけれども,いろいろある方が健康的です.きっとこれらを一つにしようとすると,活動や行動自体は同じでも,やりたいことの根源が衝突してしまい,モメる未来は避けられないと言ってしまってよいでしょう.
たとえば,もくもく会ひとつ取ったとしても,レベルアップのために集中するための相互監視を期待している人と,みんなでわいわいライブ的に議論したりコードを書いたりしたい人では,同じもくもく会を希望している人だから,という理由で同じ空間に置いておけないことは皆さん理解いただけるかと思います.それなら,2 つのもくもく会があって,たまに行き来したり,コラボしたりするくらいがちょうどよく,2 つのもくもく会が生き残る道ではないでしょうか.
最近だと "PHPカンファレンス" という名前を借りながら,メンバーに被りはありながらも別々の面々で,思い思いのカンファレンスをつくって業界に活気を与えている動きが印象的です.あすみさんのおみこしの例は非常によく本質をついているなと感じました.全国各地で似たような催しがあり,共通点も持ちつつもそれぞれの地域の特徴を盛り込んだ,それぞれの参加者が満足する催しになっている,という点が重要です.
#ツナギメエフエム.60 「1つの団体がやるとしたら、年間6カンファレンスは絶対やらないすもんね」で笑ってしまった
— 今日も誰かのにちようび(おいしい鮭親子丼) (@o0h_) 2023年10月18日
1つの団体じゃなくてもそうでは・・?
これ、全国のおみこしは各地ごとにおみこしてるのであって全てのおみこしが同じ団体がやってるわけではないという話だなあと今日打ち上げ行く前思い返すなどしていた
— あすみ (@asumikam) 2023年10月18日
知見を公開しておくことでそれらを促せる
とはいえ,コミュニティ運営なんていうものは,ある種の定石じみたものがあることも事実で,これを効率化しようと思えば,1 つのコミュニティにまとめてしまうほうが無駄がないでしょう,という気持ちもわかります.でも一緒にするとうまくいかない集団があるんです.
そこで,組織に溜め込まれた暗黙知を,文字や図,動画などを介して形式知化してしまい,それを公開しておけば,知の高速道路を敷くことができます.当然,弟子入りしてもらってコミュニティ運営を横でみてもらう形もいいでしょうけれども,もうちょっとシステマティックにいくなら知見の公開がベストかなと思います.また,connpass のようなシステムを提供することで,運営を楽にして,コミュニティを起きやすくする,走り続けやすくする方法もあります.今の自分も connpass にはおんぶに抱っこです.
暗黙知について知るには,以下の記事を読むとよいです.自分の好みで,非常によくまとまっていて,力強さも感じるよい記事です.
note.com
若者も年寄りも好きなコミュニティにいられる世の中にしよう
同じ技術だから一緒に,同じ地域だから一緒に,同じ目標だから一緒に...... 仲間のいない中で湧き出てきた熱量を抱えたみなさんだからこそ,似たものを見つけたら嬉しくて飛び上がりたくなるんだろいうということもわかります.わかるんですが,せっかく見つけた小さな種火を消してしまわないように,飛び付かずに見守ったり,遠くから応援することもまた大事なことです.仲間だからこそ,一緒にやらないという選択も持たせてあげてほしいなと,考えています.